ごく普通に身の回りにあって、自分の暮らしを支えている、当たり前にあるモノやコト。
それがどうやって自分のもとにやってきたのか、考えたこともないようなモノゴトを、新たなまなざしでみる。
こどものための博物館で、わたしはそんな思いで仕事をやってきているように思います。
そのひとつが綿をテーマにした体験型展示。2009年の国際天然繊維年以来、ほぼ毎年開催してきました。
最初の年のタイトルは、「育てる つむぐ 綿 〜はたけからおうちへ〜」。
衣服としてほぼ毎日身につけたり、タオルやハンカチ、シーツなどで使っている綿の製品が、どこからやってきて、どんなふうに作られているのか。
そんなことを知ることは、現代のわたし達にはほとんどない。
植物の恵みと、それを活かす人間の知恵、モノづくりの原点に触れてほしい。
そんな想いをこめてつけたタイトルでした。
あなたのその赤白帽は、この綿からできてるんだよ。
不思議そうに会場の様子をみていた小1くらいの男の子に伝えたら、
すごい、すごい!!
と、わざわざ友達を呼びに行って、体験しに戻ってきてくれたことがありました。
彼のあの驚きようは忘れがたく心に残っています。
あの子の中で、sence of wonderがはじけていたのだと思います。
綿を育てるのも、驚きに満ちた体験です。 春に種をまくと、夏にはアオイ科のきれいな花が咲いて、やがて固い実を結び、秋になったある日、突然その実がぱっと割れて、中からふわふわの綿花があふれる。
ボランティアの方たちに育ててもらったコットンボールで糸を紡ぐという体験に、たくさんの子どもや先生、保護者の方たちに参加していただいています。
といっても、つむぎゴマや糸車は、10分やそこらでは使いこなせないので、毎日の体験では、綿から糸ができる原理を知ってもらうため、指で紡いでもらいます。
写真は、特別ワークショップ「生みだそう!綿から糸、糸から布」の様子。
綿から糸を紡いで、小さな織物作品をつくる体験です。
このときは、つむぎゴマという道具にも触れてもらい、実際に紡ぐ体験もしてもらうのですが。。。
種を取る綿くりという作業はみんな楽しくやるけど、つむぎゴマは苦労の連続、、、!
わたしは、糸紡ぎがうまいというわけではないのですが、一度できるようになってしまうと、できなかったときのことを忘れてしまって、うまくやり方を伝えられないものなんですよね。
特に身体感覚を伴うものはそういう傾向が強いと思います。
はじめの頃はうまく伝えられなくて、子どもたちに苦労させてしましました。
いったい、わたしはどうやって紡いでいるのだろう、とよくよく見てみると、つむぎゴマで糸を紡ぐなんて、気を配ることの情報量がすごく多くて、それまで使ったことのないような、複雑な体の使い方をすることなのですよね。
それに気がついてから、自分のしていること、手の向き、指の使い方、力の入れ具合、動作の一つ一つを細部まで分解して、失敗の原因をつきとめて、いかに簡潔に伝えるか、に磨きをかけよう!ということにチャレンジしています。
たくさん時間があれば、簡単な説明だけで、あとは自分で試行錯誤するのが、こういった技の学び方かと思うのですが、このワークショップの目的は技の伝承ではないので、完全に簡単な作業にはならないのですが、できるかぎり、言葉や動作で伝えられるだけのことは伝えたいと思っています。
80分という短い時間で、小学校低学年の子どもたちに、このエッセンスを十分に体験してもらう、という我ながら高いハードル設定のおかげで、わたしも鍛錬されてきました。。
これ、難しいんだよね。
だから、できなくてもいいんだよ。できたらすごい!
と、本当に思っているのでそう言うのですが、そう言うと、意外と多くの子ができてしまうということも発見。
やる気に火がつくのかな。
難しいことをやってみたい、と思う心が折れないように、見守りたい。
手を出しすぎず、放置せず。
企画展はその後、「綿が 紡ぐ 世界」というタイトルで継続しています。
インドや南米では、何千年も前の綿製品が見つかっているそうです。
日本に綿が入ってきたのは、500年くらい前のことだそう。
意外と最近のことなんですね。
世界に綿が広がって、人々の暮らしが豊かになってきたこと。
そのことを知ることで、今のわたしたちの生き方もまた豊かになること。
植物の恵み、大地の恵みを、持続可能な形で活かしていく知恵が、いつか子どもたちのなかに芽生えてくれたら。
そんな想いを込めています。
ちょっと展示のことを書こうと思ったのに、長い。。 綿のことは、また書きたくなるだろうと思うので、またいずれおつきあいくださいませm(_ _)m
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